金属材料基礎講座-174

ICDD

 XRDの物質同定のためには基準となる材料の回折データが必要です。X線回折図形のデータはアメリカのICDD(International Center for Diffraction Data:国際回折データセンター)によってデータ収集され、データベース化しています。そのデータはPDF(Powder Diffraction File:粉末回折ファイル)と呼ばれます。PDFデータベース化は1930年代後半にダウ・ケミカルによってX線回折と相分析に関する論文が発表され、1941年にアメリカASTM(米国材料試験協会)の支援によって行われました。1969年に専門組織としてJCPDS(Joint Committee on Powder Diffraction Standard:粉末回折標準共同委員会)が設立され、1978年に国際的な参加を強調するために組織名がICDDとなりました。PDFファイルは以前はJCPDSカードと呼ばれていましたが、現在の名称はICDDカードです。ICDDカードには格子面間隔d、相対強度、ミラー指数hklなどの情報が含まれており、既知の物質については化学式、化合物名、鉱物名、構造式、結晶系、融点、密度などのデータや文献情報なども記載されています。データ登録数は数万件になり、年々更新されています。

 XRDは物質が結晶質であれば、無機物、有機物を問わずに分析できます。結晶質の物質は金属材料以外にも鉱物(酸化物や硫化物など)、有機物、腐食生成物など多岐に渡り、その適応範囲も広いです。

 

(前の記事)                               (次の記事)