金属材料基礎講座-175

ハナワルト法

 XRDによる未知物質の同定方法はハナワルト法と呼ばれます。ハナワルト法では、まず回折図形を面間隔dと相対強度にまとめます。面間隔dは回折角2θからブラッグの式によって計算します。最も相対強度の強いピーク強度を100として、他のピーク強度を計算します。最も強度の高いピークから3本を抜き取り、これを3強線と呼びます。多くの物質ではこの3強線によって回折図形を特徴づけているため、検索データの中から面間隔dと相対強度の照合を行います。3強線が一致したらその他のピークについても照合を行い、一般に8強線が一致すると未知物質は同定されたと判断できます。

 未知試料が単一試料ではなく混合物であれば、一つの未知試料の8強線が一致しても、同定されないピークがまだ残るはずです。この時は、残ったピークの中で最も強度の高いピークを100として、残りのピークの相対強度を再計算し、3強線の照合を行います。そして、全てのピークが一致したら同定は完了となります。

ハナワルト法は、現在ではPCソフトにICDDカードのデータが設定されているので回折パターンをデータ比較できます。また回折図形は全く異なる物質でも似た回折図形になることがあります。そのため未知試料の検索を絞り込むために、あらかじめEDSなどで元素分析を行うと効率的です。これは回折図形の検索では、元素、合金、酸化物などの情報を設定することで検索範囲を絞り込めるためだからです。また、元素ABの2成分からなる化合物の場合、化学成分分析のように元素A、元素Bそれぞれの組成を求めるのではなく、「化合物ABがどのような結晶構造をしているか」という化合物の状態を表します。これはEBSDの解析方法と似ています。EBSDでは同じ結晶構造で違う物質(例えば銅とアルミニウム)は区別できませんが、XRDは同じ面心立方構造の銅とアルミニウムを区別できます。

 

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