ステンレス鋼組織

 鉄鋼よりもさびや腐食に強いステンレス鋼です。ステンレス鋼は大きく分けて鉄-クロム系のフェライト系、丸天サイト系、そして、鉄-クロム-ニッケル系のオーステナイト系、二相系、析出硬化系の5種類があります。最も一般的なステンレス鋼はオーステナイト系ステンレス鋼です。

 ステンレス鋼はクロムを添加することで表面に不動態皮膜という、腐食にとても強い皮膜を自然に形成します。不動態皮膜はナノメートル単位のとても薄い皮膜なので、ステンレス鋼の金属光沢を保ちきれいな外観を保持します。

溶接断面組織

ステンレス鋼は自動車、鉄道、産業機械などさまざまな分野で使われています。そして、部品を組立てるときは鉄鋼同様に接合・溶接が行われます。写真はTIG溶接したSUS304材料です。山のように盛り上がっている場所が溶接部、溶接部と母材の境目の場所が熱影響部、溶接部から離れた場所が元材となります。

鋭敏化

 ステンレス鋼の問題の一つに鋭敏化という現象があります。不適切な熱処理や溶接などを行ったときに、ステンレス鋼の成分であるクロム炭化物の偏析が起こります。

 結晶粒界にいくつか他よりも濃く黒い場所が見られます。これらが鋭敏化によって析出したクロム炭化物です。クロム炭化物が析出すると、周りのクロム量が減少するので、腐食されやすくなります。その結果、粒界腐食を引き起こしやすくなります。

 溶接後水冷することで多くの鋭敏化を防ぐことができます。写真は溶接後特に冷却せずに放置した材料で観察されました。