金属材料基礎講座-154

EBSD

 EBSDとはElectron Back-Scatter Diffraction(電子線後方散乱回折法)の略です。SEMの中で試料を70°程度傾けて電子線を照射すると、試料表面の50nm程度から電子線の回折パターン(菊池パターン)が得られます。EBSDの概略図を図1に示します。EDSやWDSのように特性X線による元素分析ではなく、回折パターンを指数付けして金属組織の結晶方位や、結晶構造などの情報を得ます。電子線を連続的に走査することで観察面のマッピングができます。そしてEBSDでは結晶方位の連続した領域を結晶粒、結晶方位の角度の変化を結晶粒界として認識します。

 EBSDは金属組織評価において結晶方位、結晶粒、相の同定、集合組織の解析などに使用されます。金属材料は通常多くの結晶粒からなる多結晶体材料です。この一つ一つの結晶粒の方位を明らかにできることがEBSDの特徴です。また回折パターンは結晶体から起こるため、アモルファスのような非晶質材料では菊池パターンが得られずEBSDは利用できません。

 試料に照射した電子線は試料内で回折現象を起こしますが、試料の奥に侵入した電子線はエネルギーを失い、回折条件をほとんど満たさなくなります。そのため放出される回折パターンは試料の表面50nm程度に限られます。これは試料の表面状態に非常に敏感であることを表します。通常のSEM観察、EDS分析では問題にならないような研磨キズ、コンタミ、酸化膜などにもEBSDでは影響を受けます。そのため、より一層の鏡面仕上げ、鏡面研磨が要求されます。