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金属材料基礎講座-111

TRIP鋼

 TRIP鋼の正式名称はTransformation Induced Plasticity(変態誘起塑性)鋼と言います。組織としてはフェライト+パーライトまたはベイナイトに残留オーステナイトが10%程度見られる組織です。そしてSiやAlを添加して残留オーステナイトを安定化させています。残留オーステナイトが安定化されるとマルテンサイト変態が起きづらくなります。残留オーステナイトが応力を受けたことによってマルテンサイト変態することを加工誘起変態と呼びますが、この時に生じる大きな塑性変形をTRIP現象と呼びます。TRIP鋼はプレスなどの製品加工時に残留オーステナイトが安定していてマルテンサイトに変態しません。しかし強い応力や衝撃にはマルテンサイトに変態します。この時材料が硬くなり、伸びも増えるので衝撃性に対して強くなります。

 TRIP鋼は強度が590~980MPaと高く、伸びが20~30%あります。TRIP鋼は自動車用鋼板として使用されますが、プレス加工する時は残留オーステナイトのため加工性に優れ、衝突の時には材料がマルテンサイト変態するため硬くなります。

 

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