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金属材料基礎講座-110

マルテンサイトの特徴

 鋼を焼入れる時に亜共析鋼はA3線上30~50℃のオーステナイト単相から、過共析鋼はA1変態点上30~50℃のオーステナイト+セメンタイト組織から焼入れを行います。そのため過共析鋼のマルテンサイトは共析鋼と同じ炭素量のマルテンサイトとなります。そこにセメンタイトが追加した組織となります。

 マルテンサイトの硬さは主に炭素量によって決まります。これは炭素鋼も合金鋼も同じ傾向です。マルテンサイトの硬さと炭素量の関係を図1に示します。約0.6~0.7%炭素量の時に硬さのピークとなり、それ以降はあまり変わりません。これは過共析鋼でもマルテンサイトの炭素量が共析鋼と同じであること、軟らかい残留オーステナイトが表れることなどが理由です。

 マルテンサイト組織は炭素量によって特徴が変わります。炭素量約0.6%以下のマルテンサイトはラスマルテンサイトと呼ばれ、炭素量0.6から1.0%のマルテンサイトはラスマルテンサイトとレンズマルテンサイトの混合組織、炭素量1.0%以上のマルテンサイトはレンズマルテンサイトと呼ばれます。

 マルテンサイト変態のしやすさを「焼入れ性」として表します。マルテンサイト変態することを「焼が入る」と表すこともあります。焼入れ性のよい鋼ほど、冷却速度を遅くしてもマルテンサイト変態が起きやすくなります。また鋼の形状が大きくなるほど、焼入れした時に内部が冷却されにくくなります。そのため、焼入れしても表面は硬いマルテンサイトになっても、内部は焼入れされていないパーライト組織となることがあります。形状やサイズによって焼入れしやすさが変化することを質量効果と言います。