· 

金属材料基礎講座-17

過冷却と核生成

 溶融状態(液相)の金属を冷却すると凝固温度で固相に変化します。しかし、凝固温度に到達してすぐに凝固過程がはじまるのではありません。凝固温度に達しただけでは金属はまだ液相状態のままなのです。凝固温度で凝固が起こらずに液相状態のままさらに温度が下がり続けます。この凝固温度より低い温度でも液相状態を保持して温度が低下する現象を過冷却と呼びます。これを図1に示します。また、凝固が起こるためには温度だけでなく凝固の核が必要です。この過冷却の時に金属原子が集まり、凝固のための核生成が起こります。

 凝固の核があるとその周りに金属原子が集まり、結晶構造を形成していきます。これが凝固過程です。一度、核生成が行われると過冷却から凝固温度に上昇し、凝固が完了するまで温度が一定となります。温度が一定となるのは凝固過程では凝固潜熱という熱の放出が金属自身から起きます。そして冷却という周囲の環境のバランスが取れて凝固中は温度が一定になるのです。核生成から成長してきた原子集団が結晶粒になります。そして隣の結晶粒とぶつかった所が結晶粒界になります。その様子を図2に示します。

 核生成は溶融金属自身の中から起こる均質核生成と、鋳型や不純物元素などの異質な所を核として起こる不均質核生成の2種類があります。実際の凝固においては不均質核生成の方が容易に起きます。不均質核生成の核となる材料を多量に添加させれば、それだけ核生成の場所が増加します。その結果、結晶粒を微細にすることができます。

 

(前の記事)                               (次の記事)