金属材料基礎講座-182

試料溶液の希釈

 ICP用の混合標準液では様々な元素が用意されています。標準溶液では各元素の濃度を1000mg/L、100mg/L、10mg/L、1mg/Lなどの単位で販売されています。測定する試料中の元素の量もmg/L単位に換算します。例としてSCM420を0.5g分析する時の計算をします。なお計算では金属系の元素のみとし、炭素、リン、硫黄は除外します。

 用意する標準試料の濃度に対応していれば、試料溶液の希釈には一つだけの答え、何倍希釈でなければならない、というのはありません。仮に標準試料の濃度を0から100mg/Lで用意するときは表1の例では100倍希釈で標準試料の濃度範囲におさまります。しかし、標準試料の濃度を0から20mg/Lで用意するときはMnとCrが範囲を外れてしまうので、この2元素だけ1000倍希釈をする。という作業が発生します。

 試料の希釈に正解はありませんが、元素ごとに希釈倍率が異なるとそれだけ作業の手間が増えるので、出来る限り一つの希釈倍率で標準試料の濃度におさまるようにするとよいです。

表1 SCM420を分析する時の希釈倍率計算例

元素 成分(%)

試料中の重量

(mg)

100mL中の濃度

(mg/L)

100倍希釈の濃度

(mg/L)

1000倍希釈の濃度

(mg/L)

Si 0.20 100 1000 10 1.0
Mn 0.70 350 3500 35 3.5
Cr 1.10 550 5500 55 5.5
Mo 0.20 100 1000 10 1.0
Ni  0.10  50 500 5 0.5

 

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