金属材料基礎講座-171

原子散乱因子

 X線と電子による相互作用や散乱を一つの原子に対して見てみます。原子の周りには原子番号の数だけ電子があります。もし入射X線が同じ方向に散乱(θ=0°)されると、全ての電子から散乱が起こるので、散乱されたX線の振幅(強度)は各電子の散乱強度の合計となります。しかし、散乱角度が0°以外の例えば30°や60°になると、散乱されたX線の強度は0°の時よりも弱くなります。これは入射X線と散乱X線(反射X線)の波長の位相が合わなくなっていくことが原因です。入射X線と散乱X線の角度はsinθで表します。これにX線の波長λで除した値を原子散乱因子fと呼びます。例として鉄、銅、アルミニウムの原子散乱因子とsinθ/λの関係を図1に示します。原子散乱因子は0の時が最大値となり各金属の原子番号の値(鉄:26、銅:29、アルミニウム:13)となります。そして0以降(散乱角度が0°から変化)は低下する傾向となります。

 また原子散乱因子は構造因子と関係があります。それは構造因子の計算式に原子散乱因子が含まれているからです。単位格子の各原子の原子散乱因子を合計したものが構造因子となります。

 

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