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金属材料基礎講座-105

マルテンサイト変態

 マルテンサイト変態とは、鋼をオーステナイト温度まで加熱した状態から急冷(焼入れ)させることによって非常に微細で硬い組織にすることです。マルテンサイト組織はフェライト、パーライト組織よりも微細な組織になります。マルテンサイト変態を起こすためにはいくつか条件があります。まず、鋼をオーステナイト相にする必要があるため、炭素量2%以下に限られます。また、炭素量が少なすぎてもマルテンサイト変態を起こしづらくなります。次にオーステナイトの鋼を共析変態点以下に急冷するとマルテンサイト変態を起こしますが、この時の冷却速度が遅いとマルテンサイト変態が起きずに、通常のパーライト組織になります。

 マルテンサイト変態によって鋼が硬くなる理由は主に炭素の影響です。例えば共析鋼を焼入れする場合、炭素量は0.76%です。高温のオーステナイト相ではこの炭素量は全て固溶していますが、低温のフェライト相では炭素の最大固溶量はわずか0.02%程度しかなく、固溶できない炭素の大部分は共析反応でパーライト(フェライトとセメンタイト)になります。この共析反応は時間をかけて炭素の移動(拡散)が行われます。この時に急冷すると、炭素は拡散できずにフェライト相に強制的に取り込まれます(無拡散変態)。これがマルテンサイト組織になります。