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金属材料基礎講座-87

化成処理

 化成処理もめっきや塗装のように皮膜防食の一種です。化成処理とは基材金属をリン酸塩などの処理溶液に浸して、表面を化学反応させて酸化皮膜などを形成する処理です。化成処理は単独でも耐食性を向上する効果がありますが、めっきや塗装の下地処理として行われることもあります。化成処理によってめっきや塗装の密着性向上や耐食性をさらに向上させる効果があります。化成処理の種類を表1に示します。

 リン酸塩処理は鉄鋼材料の化成処理として代表的な処理です。リン酸塩の皮膜を鉄鋼表面に形成します。リン酸塩の種類も色々ありますが、密着性がよくなるので下地処理に行われることが多いです。リン酸亜鉛処理を亜鉛めっき処理後に行うことで耐食性を向上させることも行われています。

 クロメート処理はクロム酸塩を使用した化成処理です。クロムのもつ不動態皮膜特性によって耐食性を向上させます。光沢クロメート処理、黒色クロメート処理など色々な色調や光沢があります。また六価クロムは有毒性があるので、無害な三価クロムに変化しています。

 黒染は古くから行われている鉄鋼表面を黒い酸化皮膜で保護する処理です。アルカリ液に浸して四酸化三鉄を形成します。しかし、皮膜は緻密ではないので耐食性はあまりよくないです。

 陽極酸化処理は主にアルミニウムの表面に酸化皮膜を形成する処理です。アルミニウムの陽極酸化処理をアルマイト処理とも呼びます。アルミニウムを硫酸などの酸性溶液に浸して電気分解することで酸化アルミが形成されます。この酸化アルミは六角形の緻密な構造となり、中心に孔があります。この孔はそのままでは耐食性はよくないので、封孔処理をしたり、塗装を入れて着色したりします。

方法 内容
 リン酸塩処理

 鉄鋼表面にリン酸塩の皮膜を形成します。

リン酸亜鉛処理、リン酸鉄処理、リン酸カルシウム処理などがあります。

クロメート処理

クロム酸塩を用いた化成処理。耐食性が向上します。

光沢クロメート処理、黒色クロメート処理、有色クロメート処理などがあります。

黒染

鉄鋼に古くから使用される処理。アルカリ液に浸して四酸化三鉄を形成します。

皮膜は緻密ではないので、耐食性はあまりよくないです。

陽極酸化処理

アルミニウムにアルミニウム酸化膜を形成します。

耐食性がよく、着色もできます。

 

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