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金属材料基礎講座-74

粒界腐食

 結晶粒界は元々不純物介在物などが偏析しやすい場所です。しかし、通常の材料や環境であれば問題になることはほとんどありません。しかし、特定の材料では粒界に偏析した金属間化合物などによって結晶粒界が優先的に腐食されることがあります。代表的な現象はオーステナイト系ステンレス鋼の鋭敏化です。SUS304を溶接すると熱影響部が加熱されて粒界にクロム炭化物のCr23C6が析出します。鋭敏化と粒界腐食を図1に示します。クロム炭化物が析出するとその周囲のクロム濃度が低下するため、不動態しなくなります(ステンレス鋼の不動態皮膜はクロムの影響です。クロム量が約12%以上になるとクロムの不動態皮膜が形成されます)。これを鋭敏化と言います。鋭敏化が起こると、材料は粒界から腐食されていきます。鋭敏化を起こしやすい温度域が600~800℃にあるため、ステンレス鋼を溶接した後は急冷してこの温度域を早く通過することが対策になります。鋭敏化はクロム炭化物のためステンレス鋼のなかでも炭素量を少なくして、モリブデンを添加した鋼種を使用すると鋭敏化しにくくなります。またチタンやニオブなどはクロムよりも炭素と結びつきやすいため、これら元素を添加することなども有効です。

 

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