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金属材料基礎講座-54

疲労と残留応力

 疲労強度を向上させるために圧縮残留応力を付与することは有効です。それは圧縮残留応力が働いていると、材料に割れが発生した時に、割れを押さえつけるように材料自身が働くからです。圧縮残留応力を付与する方法としてショットピーニングや高周波焼入れがあります。これらの方法は圧縮残留応力の付与だけでなく、硬さも向上します。そのため、疲労強度向上のためによく使用されます。ここで一つ注意点があります。残留応力には圧縮の他に引張もあります。もし引張残留応力が付与されていたら、割れが発生した時に、割れを自ら広げて破壊しやすくなります。圧縮残留応力と引張残留応力の違いについて図1に示します。溶接や塑性加工などで引張残留応力が付与されるときは注意が必要です。引張残留応力の緩和には熱処理によるひずみ除去などが有効です。