回復と再結晶
金属材料に圧延や鍛造などの加工を行うと、材料中にひずみや転位が蓄積されて加工硬化していきます。加工硬化された材料は伸びや靭性などの塑性加工性が低下します。ここで、加工硬化された材料を加熱すると、次第に材料中のひずみが解放され、新しいひずみのほとんどない結晶粒に置き換わる現象が起きます。これを回復・再結晶と呼びます。その硬さと伸びと組織の概念図を図1に示します。低温では硬さが高く伸びが低いです。その時の組織はひずみの多い組織になります。これを加熱すると原子の拡散が起こり、格子欠陥の移動や転位の消滅や再配列が起きます。その結果残留応力が減少していきます。これを回復と呼びます。しかし、この段階では硬さや伸びには変化は少なく、光学顕微鏡観察でも大きな変化は見られません。
回復からさらに温度を上昇すると、結晶粒界などからひずみのほとんどない新しい結晶粒が生成します。やがてもとのひずみの蓄積した組織から全て新しい結晶粒に置き換わります。これによって硬さは低下し、伸びや靭性が上昇します。これを再結晶と呼びます。再結晶の駆動力は回復の後も残っているひずみエネルギーです。再結晶が完了した後もさらに温度上昇を続けると結晶粒の2次成長(結晶粒粗大化)が起きます。
再結晶後の結晶粒径については再結晶温度とともにはじめの加工量も影響します。この概念図を図2に示します。加工量が大きければそれだけひずみや転位が多くなり再結晶の核生成サイトが多くなります。その結果、加工量が大きくなるほど結晶粒径が細かくなります。同様に加工量が大きくなるほど、再結晶温度に必要なエネルギーが低下するので、再結晶温度は低く、結晶粒径は細かくなります。また同じ加工量であれば、再結晶温度が高い方が結晶粒は大きくなります。再結晶を起こすためには最低限必要な加工量というものがあります。鉄の場合約5%とされています。
再結晶を起こす温度は金属材料によって変わりますが、一般的には絶対温度表示での融点の約30~50%程度とされています。
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