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金属材料基礎講座-217

液相の多い包晶組織の量的計算

 包晶状態図の液相が多い組成における凝固、包晶反応、析出過程を見ていきます。図1に包晶反応状態図の模式図を示します。液相の多いW合金(A-65%B合金)を考えます。はじめに全て液相Lの状態から液相線、固相線に従って初晶α(α1)の晶出が起こります。温度T1(包晶温度直上)における初晶αと液相Lの量は、てこの原理によりLはWS、初晶αはVW、分母はVSとなります。これらを計算すると式(1)、(2)のようになります。

 温度T2では包晶反応が起こります。包晶線のL、α、βそれぞれの位置より、L:TS/α:VTの時に100%βになります。図1の状態図ではL:α=2:1の割合でβ相が晶出します。W合金の場合、Lに対してαが少ないので、全てのαと一部のLが包晶βになります。そして残りのL(L2)は残ります。包晶βに使われるLの量(L’)は式(4)、(5)のように計算できます。そして残りのL、包晶βは式(6)、(7)のようになります。

 T2から温度が低下すると液相線と固相線にもとづき、Lはβに凝固します。このβは包晶βと区別するために初晶β(β3)と呼びます。

 温度T3になると包晶β、初晶βどちらも溶解度の減少に伴うαの析出が起こります。図2より析出は温度T3から起こるため、βからαの析出ではWを起点としたてこの原理となります。分子はXW、分母はXU、これにβの量をかけて析出αを計算します。これらの計算式を式(10)~(13)に示します。

αの総量は包晶βからの析出α(α3)と初晶βからの析出α(α4)、βの総量は包晶β(β2’)と初晶β(β3’)です。これらの計算を式(14)、(15)に示します。検算として、T3におけるα、βをW組成から直接てこの原理で計算すると式(16)~(19)となります。この結果が等しいことが検算成功です。

 

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