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金属材料基礎講座-216

初晶の多い包晶組織の量的計算

 包晶状態図の初晶が多い組成における凝固、包晶反応、析出過程を見ていきます。図1に包晶反応状態図の模式図を示します。初晶の多いW合金(A-40%B合金)を考えます。はじめに全て液相Lの状態から液相線、固相線に従って初晶αの晶出が起こります。温度T1(包晶温度直上)における初晶αと液相Lの量は、てこの原理によりLはWS、初晶αはVW、分母はVSとなります。これらを計算すると式(1)、(2)のようになります。

 温度T2では包晶反応が起こります。包晶線のL、α、βそれぞれの位置より、L:TS/α:VTの時に100%βになります。図1の状態図では式(3)よりL:α=2:1の割合でβ相が晶出します。W合金の場合、Lに対してαが多いので、Lに対応するαだけが包晶βになり、残りのαは残ります。包晶βに使われるαの量(α2)は式(4)、(5)のように計算できます。そして残りのα(α1’)、包晶β(β2)は式(6)、(7)のようになります。

 温度T3ではα、βどちらも溶解度線の減少に伴いαからはβ、βからはαの析出が起こります。βからαの析出ではTを起点としたてこの原理となります。分子はXT、分母はXU、これにβの量をかけて析出αを計算します。αからβの析出ではSを起点としたてこの原理となります。分子はSU、分母はXU、これにαの量をかけて析出βを計算します。これらの計算式を式(8)~(11)に示します。αの総量は初晶α(α1’’)と析出α(α3)、βの総量は包晶β(β2’)と析出β(β3)です。これらの計算を式(12)、(13)に示します。検算として、T3におけるα、βをW組成から直接てこの原理で計算すると式(14)~(17)となります。この結果が等しいことが検算成功です。

 

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