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エピソード-112

交渉の余地

 すでに気持ちが決まっている相手に対しては交渉の余地がほとんどありません。AとBで迷っているのであれば、Aの良いところを伝えて、相手にAを選んでもらえるようにすることはできます。しかし、すでにBと決めている相手の場合、どれだけ理論的にAの良いところを話してもBを選びます。自分からコミュニケーションや交渉をする時は相手をよく見ますが、相手の状態についてよく見ます。すでに決めているのか、説明を聞きたいのか、元々肯定的なのか否定的なのか、賛同をもとめているだけなのか、などです。その状態を見ない限り、どれだけ優れた交渉やプレゼンテーションをしても効果がありません。

 相手がどれだけ聞く耳を持っているかが交渉の余地となります。交渉の余地がない相手に対しては交渉するのは時間のムダです。形式上の合意が必要なだけなので、早々に切り上げましょう。相手が聞く気があるのかないのかは聞く姿勢や態度にも表れます。話すときは相手の手ごたえを感じるのです。聞いてくれている感じがするのか、伝わっている感じがするのか、避けられているような感じなのか、嫌々ながらの聞く姿勢なのか、です。もちろん、聞く気はあったけど、こちらの話し方や内容が悪くて嫌になるということはあります。交渉を断られることはビジネスでは日常的に起こります。何が伝わらなかったのかと振り返ることも必要ですが、きちんと伝わったけれど断られることも十分起こります。そのような時は「合わなかった」が一番の理由かもしれません。