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金属材料基礎講座-68

不動態皮膜

 金属表面をどれだけ鏡面仕上げに研磨して磨いても大気中の酸素と表面が反応してnmレベルの薄くて透明な酸化膜が生成します。腐食の観点から酸化膜の性質を大きく2種類に分類できます。1種類目は、一度酸化膜が出来るとそれ自体が防護壁となって腐食が進行しないタイプです。これはステンレス鋼やアルミニウムなどに見られます。2種類目は、酸化膜に防護作用がなく、腐食が進行するタイプです。これは炭素鋼などに見られます。

 腐食を防ぐ酸化膜として不動態皮膜があります。不動態皮膜は酸化膜の1種類です。不動態皮膜の特徴の1つとして酸化膜の厚さがナノレベルの非常に薄い膜であることが挙げられます。そのため、不動態皮膜は容易に生成され、たとえ傷ついても周囲の酸素によって再び不動態皮膜が出来上がります。その様子を図1に示します。ステンレス鋼などは日常的な環境であれば、特別な防錆処理をしなくても、その表面は腐食されずに金属光沢を保持しています。化学的には、不動態皮膜は完全に腐食が進行しない膜ではなく、腐食速度が極めて遅い状態と言うことができます。

 不動態皮膜の電気化学的特性を表すグラフとして図2にアノード分極曲線を示します。文献によっては縦軸と横軸が入れ替わっているタイプのグラフも見られます。アノード分極曲線とは材料に電位をかけた時の電流密度(腐食速度に相当する)の変化をグラフ化したものです。はじめに電位を高くすると同じように電流密度も高くなります。ここは活性領域です。そしてある電位になると急に電流密度が下がり一定となります。この時が不動態領域です。さらに電位を高くすると酸素発生反応によって再び電流密度が上昇します。この時は過不動態と呼びます。不動態皮膜の性質として、不動態領域の電流密度が低いほど不動態皮膜が安定し、耐食性がよいです。