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金属材料基礎講座-41

シュミット因子

 金属材料はすべり運動によって塑性変形が起きます。そしてすべり面は最密充填構造です。結晶構造によってすべり系の数は異なります。体心立方格子が48個、面心立方格子が12個、稠密六方格子が3個すべり系があります。一般にすべり系が多いほど塑性変形しやすいです。

 断面積Aの単結晶の丸棒に引張荷重Fが負荷された時を考えます。材料には軸方向に応力が負荷されますが、塑性変形が起こるためにはすべり面にせん断応力τが作用してすべり運動を起こすことが必要です。すべり運動は丸棒の垂直断面から、ある角度のすべり面で起こります。ここでλはすべり面と引張荷重の角度、θはすべり面の法線と引張荷重の角度です。引張荷重のうちすべり面に負荷される荷重はFcosλとなり、すべり面の面積はA/cosθとなります。この荷重を面積でわることでせん断応力が求められます。これを式(1)に示します。

 

τ=F/Acosλcosθ=σcosλcosθ (1)

 

σは引張応力です。cosλcosθはシュミット因子と呼ばれ、最大値はλ=θ=45°すなわち0.5です。すべり系の中でも大きなシュミット因子をもつすべり系を主すべり系と呼びます。シュミット因子により、丸棒に引張応力を負荷した場合、最大のせん断応力は斜め45°の向きに働くことを表します。

 

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