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金属材料基礎講座-36

応力-ひずみ線図

 引張試験は金属材料の機械的特性を調査する基礎的な試験です。引張試験で得られる応力-ひずみ線図から降伏応力、引張強度、伸びなどの値を得ることが出来ます。炭素鋼の引張試験における応力-ひずみ線図を図1に示します。応力をかけると、はじめはひずみが直線的に増加します。この時材料はフックの法則に従い応力とひずみが(1)式のような直線関係になります。

 

σ=εE  (1)

 

σ:応力

ε:ひずみ

E:比例係数(ヤング率)

 

 フックの法則に従う時は弾性変形領域のため応力を除荷すると元の形状に戻ります。そしてこの直線の傾きEをヤング率といいます。応力を増加すると、ある値で比例関係がくずれ、応力を除荷してもひずみが残り元の形状に戻らなくなります。この応力をそれぞれ比例限度、弾性限度と呼びます。さらに応力を増加するとある応力値でピークとなり、応力が下がる現象が起きます。このピークの応力を上降伏応力、下がった時の応力を下降伏応力と呼びます。単に降伏応力と呼ぶときは上降伏応力を指します。そして降伏応力は応力を除荷しても永久ひずみが残る応力、塑性変形が始まる応力として扱われます。

 降伏応力の後しばらくはほぼ一定の応力でひずみが増加します。そして再び応力とともにひずみが増加します。しかしこの時は塑性変形を起こしているため直線関係ではなくなります。この間、試験部分は一様に伸びていきます。そして最大応力値に達します。この最大応力値を引張応力と呼びます。引張応力を過ぎると材料の一部がくびれてくるため、試験断面積が減少し、結果として応力も下がります。そして最終的に材料が破断します。この時の応力を破断応力と呼びます。

 引張試験全体を通して伸びた量を伸び、また伸びた量を元の試験片の評点間距離で割ったひずみとして評価します。応力-ひずみ線図上では、破断応力からヤング率の傾きと同じ平行線をおろし、ひずみの軸と交わった値がひずみとなります。

 

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