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金属材料基礎講座-24

拡散とFickの法則

 水などの液相にインクなどの他の液相を入れると、徐々に広がっていきます。そして、広がるにつれて、インクの色も徐々に薄くなっていき、最後は全体が均一な色に変わります。このようにある一定の状態にある物質の中に異なる物質を入れて、それが時間の経過とともに、濃度が均一になるように移動する現象を拡散と言います。そしてこの拡散は液相だけでなく、固相でも起こります。もちろん、液相の中を移動するのと、固相の中を移動するのでは速度のケタが違います。

 金属の場合、原子が移動する方向と速度を表す法則がFickの法則です。Fickの法則には第1法則と第2法則があります。また金属の拡散には温度依存性もあります。それぞれを式(1)、(2)、(3)に表します。記号の意味は下記の通りです。

 

J 拡散束または流束(kg/m2s)

D 拡散係数(m2/s)

C 濃度(kg/m3)

x 位置、距離(m)

t 時間(s)

D0 振動数因子

Q 活性化エネルギー(J(ジュール)/mol)

R 気体定数(J(ジュール)/mol・K)

T 絶対温度(K)

 

 第1法則では定常状態として濃度が時間に関して変わらない時に使用されます。ここでは、ある面を単位時間当たり、単位面積当たり通過する原子の量として表します。

 第2法則では非定常状態として濃度が時間に関して変化する時に使用されます。実際の拡散現象では非定常状態がほとんどです。例えば浸炭処理では、最初は表面の炭素濃度が高いですが、時間の経過とともに炭素が内部に拡散するため、表面の炭素濃度は時間の経過とともに減少します。反対に内部の炭素濃度は、最初は低いですが、表面から炭素が拡散してくるため、徐々に炭素濃度が高くなっていきます。そして、最終的にはある濃度勾配が出来上がります。第2法則ではそのことを表しています。

 拡散係数の温度依存性では、いわゆるアレニウスの式の形となっています。例えば熱処理などで温度を上げると処理時間が短くなります。これは温度を上げるほど拡散係数が増加して、原子の移動速度が速くなるために処理時間が短くなることと関係してきます。これら3つの式より拡散現象では濃度が高いほど、活性化エネルギーが小さいほど、温度が高いほど拡散しやすくなります。

 拡散では2種類の原子が互いに拡散移動する相互拡散と、1種類の原子が自分自身の中を拡散する自己拡散があります。拡散の経路は空孔や転位などの格子欠陥が多くなります。これは周りの原子から抵抗を受けにくいためです。